こんにちは、エム・フィールドES事業部の2部の部長の中井健介です。
好きな色は、ネイビーです。
今日は、私の事業部で進めているエンジニアの「リスキリング」について、ご紹介します。
■目次
・リスキリングとは?リスキリングが求められる社会的な背景
・実際の顧客要望の変化と当社の課題
・当社が注力するリスキリングの内容
・リスキリング〜フルスタックエンジニアを目指す
■リスキリングとは?リスキリングが求められる社会的な背景
まずは、リスキリングとは何か?を経済産業省が発表している『リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―(2021/2/26リクルートワークス研究所)」を元に読み解いていきます。
このレポートの中で、リスキリングとは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と記載されおり、リスキリングとは、仕事の中で学習するサイクルで得られるものではなく、単なる「学び直し」でもなく、「これからも仕事で価値創造をし続けるために必要なスキルを学ぶこと」とされています。
同レポートの中に、Google検索の結果が掲載されているのですが、日本語の「リスキリング」という単語は、2021年1月の2,500件から2021年2月は77万件と1ヶ月で300倍以上に検索数が増加しています。英語の「Reskilling」という単語は、2020年5月の検索数81万件から2020年10月は378万件とこちらも大きく伸長しています。海外ではコロナ禍で一足早くリスキリングの重要性が認識されたのかもしれません。
同レポートの中で、リスキリングの先駆者としてアメリカのAT&Tが取り上げられています。AT&Tは2008年の時点で既に「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎ ず、約10万人は10年後には存在しないであろうハードウェア関連の仕事のスキルしか持っていない」として、2013年に「ワークフォース2020」というリスキリングのプログラムをスタートしました(現在も後継プログラムが継続中)。
2020年までに10億ドル(約1,140億円)を投資し、10万人のリスキリングを行った結果、社内技術職の80%以上が社内異動によって充足されているそうです。またこのプログラムに参加した従業員は、参加していない従業員と比較して1.7倍昇進しており、離職率は1.6倍低くなっているそうです。
他にもアマゾンやウォルマートもリスキリングを実行していますし、世界経済会議(ダボス会議)では、2018年から3年連続で「リスキル革命」と題されたセッションを行っており、
「第4次産業革命により、数年で8,000万件の仕事が消失する一方で9,700万件の新たな仕事が生まれる」と発表しています。
日本では、経済産業省が選定する「DXグランプリ2021」を獲得した日立製作所の国内グループ16万人を対象にしたDX教育を行っていたり、「ITカンパニーからDXカンパニーへ」と宣言した富士通は、DX企業に変革するために必要な投資として5年間で5〜6,000億円もの巨額な投資を積極的に遂行すると発表しています。
「2025年の崖」の克服のためにDXの本格的な展開が必要と論じた「DXレポート」で触れられている通り、企業経営にDXを取り入れることは避けられない変化であり、事業の変革にともなって、人材のスキルも変革しなくてはならないと多くの企業がリスキリングに本腰を入れ始めたのではないでしょうか。
■実際の顧客要望の変化と当社の課題
DXの取り組みを推進・加速させるためには、企業がデジタル技術を導入して、スピーディにアプリケーションを開発し、効率的且つ継続的にサービスをリリースすることが求められます。
昨今はB2C向けにWebサービスを展開している企業のみならず、B2B向けの企業や金融系企業においても俊敏性や柔軟性を重視した開発ニーズが高まっており、開発ベンダーに求められるスキルにも変化が見られます。
● インフラ環境:オンプレミス ⇒ クラウド
● 開発手法:ウォーターフォール ⇒ アジャイル
● アーキテクチャ:モノリシック ⇒ マイクロサービス
ここ数年、実際に当社が参画するプロジェクトについても「クラウド」、「コンテナ」、「アジャイル」の技術要素を含んでいる、もしくはスキル要件として定義されているプロジェクトが増えてきていることから、これらのデジタル技術は普及期に突入しつつある段階で、これからのDX時代で必要不可欠となる技術と言えるかもしれません。
しかしながら、これらのデジタル技術を持つ人材は需要に対して大幅に不足しており、中途採用による獲得も非常に難しいため、人材不足が大きな課題となっています。
このような現状を踏まえ、当社ではデジタル技術の人材を社内で育成していく「リスキリング」が最善の手段だと考え、昨年度から事業部全体で取り組みを始めています。
■市場ニーズを踏まえた当社のリスキリングの取り組み事例
現在、当社がリスキリングで注力しているのは、市場や顧客への訴求効果を高めることができる「クラウドネイティブ関連の技術」になります。
当社は金融系の業務アプリケーション開発を強みとしていますが、クラウドネイティブ関連の技術を新たな武器として習得することで、今までの開発プロジェクトで培ってきた「開発ノウハウ」や「品質力」とクラウドネイティブの「柔軟性」を掛け合わせた「高付加価値なアプリケーション開発サービス」の提供が可能になると考えたのが理由の一つになります。
クラウドネイティブとは、クラウドの利点を最大限活用し、その環境上で実行されるアプリケーションについてもクラウドを前提とした設計にすることを指しており、アプリケーション開発の知識だけではなく、インフラ環境や運用も含めた幅広い知識と技術が要求されます。
● コンテナ
● コンテナオーケストレーションツール
● DevOps
● CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)
● マイクロサービス
取り組みを分けると、大きく2段階で行っています。
第一段階として、「一定以上のアプリケーション開発のスキルを持ち、習得したクラウドネイティブ関連の技術を開発現場に適用することができる。また育成者として社内教育や社員全体の底上げを推進できる人材」と定義した「テクニカルリードメンバー」を複数名選出し、先陣を切ってクラウドネイティブ関連の技術を習得してもらいました。
第二段階は「開発現場への適用」として、テクニカルリードメンバーを中心としたチーム編成を行い、受託開発やクラウドネイティブに関連する顧客のプロジェクトに参画し、実務レベルでノウハウ蓄積と開発実績の積み上げを行っています。
同時に「社内への技術浸透」のために、テクニカルメンバーが主体となり、社内向けの座学形式&ハンズオン形式の学習コンテンツを作成し、勉強会を定期開催しています。
当社のリスキリングの取り組みは、まだ途中段階にあるので、一人でも多くの社員がクラウドネイティブ関連の技術を開発現場で活かせるようになるための工夫や仕組みを取り入れながら、取り組み自体を形骸化させず継続的に実施していくことが今後の課題となります。
■リスキリング〜フルスタックエンジニアを目指す
通常アプリケーション開発では、「要件定義 ⇒ 設計 ⇒ 開発 ⇒ 運用 ⇒ 保守」の工程をシステムエンジニア、プログラマ、インフラエンジニアが分業して開発を行いますが、分業で行うとその分、開発工数と開発費が膨らみます。
そこで、設計・開発から運用までの全ての業務をこなすことができる「フルスタックエンジニア」がいることにより、開発スピードが上がり開発費も削減できます。
フルスタックエンジニアになるためには、開発から運用まで幅広く対応できるスキルが求められます。そのためには、トレンドのプログラミング言語知識やミドルウェア、クラウドに関する知識の習得が必要になります。また、業務外においても常に技術に関するアンテナを張り、トレンド情報をインプットし続けるような向上心も必要になります。
高度で幅広い知識とスキルを保有しているフルスタックエンジニアは、今後も需要が高まり続けることは明白です。社員にはリスキリングによってフロントエンド、バックエンド、インフラの技術をバランス良く身に付けてもらい、将来的には市場価値の高いフルスタックエンジニアを目指してほしいと考えています。
技術進化が激しいDX時代では、今までに身に付けた業務知識やスキルだけでは、近い将来行き詰まってしまいます。そのような状況においても第一線でエンジニアとして活躍し続けるためには、リスキリングは欠かせません。
しかしながら、リスキリングに対してモチベーションが高い社員ばかりではありません。
なぜ新しい技術を学ぶ必要があるのかを理解してもらうために、リスキリングとセットで継続的な動機づけやその先のキャリアイメージをしっかり示すことが重要になります。
これからも社員が新しい技術を積極的に学べる環境を提供し続けることで、業務を通じて自身の成長や技術力の向上を実感してもらいたいと考えています。
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